光を背負う、僕ら。―第1楽章―



そして強弱のつけ方も、一分の狂いもない程上手い。



流れるように動く指も、あたしとは格段に違って見えた。



何から何まで、小春ちゃんの演奏は素晴らしいと言えるものだった。



これこそ、


《音楽は、心の表れ》


…なのかもしれない。



きっと、小春ちゃんの心はこの演奏みたいに澄みきっているんだろうな……。



そう思う反面、あたしの中に辛い気持ちが現われた。



……だから。


だから、伸一君は小春ちゃんのことを好きになったのかな――。



悲しげな瞳で小春ちゃんを見る。



瞼を伏せて、ピアノを弾く小春ちゃん。



長い睫毛が風で微かに震えている。



瞼を上げれば、真剣な瞳をしていた。



まるで……ピアニストみたい。



綺麗で、華やかで…。



おまけに、何をしても完璧にこなしてしまう小春ちゃん。



だから、伸一君は好きになったんだよね…。



なんだか小春ちゃんの姿が見ていられなくなって目を閉じた。




――小春ちゃんは、伸一君と付き合っている。



付き合いだしたのは、中学二年生という年が終わる頃だった。



中学二年生の時、二人は同じクラスだった。



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