光を背負う、僕ら。―第1楽章―
それに伸一君は、いつだって優しい瞳で小春ちゃんを見ているんだ。
それにもう一つ、ショックを受けない理由がある。
伸一君は小春ちゃんと付き合って、笑顔でいることが多くなった。
付き合う前も笑顔でいることは多かったと思うけど、今はそれよりも多い。
伸一君は、それだけ小春ちゃんのことが好きなんだ。
そしてあたしは、そんな伸一君を前よりも好きになったんだ…。
伸一が笑顔を向ける相手は小春ちゃんだけど、それでもいい。
伸一君が、笑顔なら。
伸一君が、幸せなら。
あたしは好きな人の幸せを願えるような、そんな女の子になりたい――…。
パチパチパチパチ…
拍手の音が、突然耳に入ってきた。
どうやらいろいろ考えているうちに、小春ちゃんの演奏が終わったらしい。
ハッとして、みんなと同じように拍手をする。
「小春ちゃん、良かったよー!」
「うん、さすがだよね!!」
「さすが、戸沢香澄さんの娘だね!」
「そんなことないよ。 だけどみんな、ありがとう!!」
小春ちゃんは、インタビューを受ける芸能人みたいになっていた。