光を背負う、僕ら。―第1楽章―



それに伸一君は、いつだって優しい瞳で小春ちゃんを見ているんだ。



それにもう一つ、ショックを受けない理由がある。



伸一君は小春ちゃんと付き合って、笑顔でいることが多くなった。



付き合う前も笑顔でいることは多かったと思うけど、今はそれよりも多い。



伸一君は、それだけ小春ちゃんのことが好きなんだ。



そしてあたしは、そんな伸一君を前よりも好きになったんだ…。



伸一が笑顔を向ける相手は小春ちゃんだけど、それでもいい。



伸一君が、笑顔なら。

伸一君が、幸せなら。




あたしは好きな人の幸せを願えるような、そんな女の子になりたい――…。






パチパチパチパチ…




拍手の音が、突然耳に入ってきた。



どうやらいろいろ考えているうちに、小春ちゃんの演奏が終わったらしい。



ハッとして、みんなと同じように拍手をする。



「小春ちゃん、良かったよー!」


「うん、さすがだよね!!」


「さすが、戸沢香澄さんの娘だね!」


「そんなことないよ。 だけどみんな、ありがとう!!」



小春ちゃんは、インタビューを受ける芸能人みたいになっていた。



< 68 / 546 >

この作品をシェア

pagetop