光を背負う、僕ら。―第1楽章―
さっき誰かが言った、
『戸沢香澄』
と言う名前。
戸沢香澄さんは小春ちゃんの母親でもあり、有名なピアニストでもある。
尚も現役で活躍中。
そしてコンサートのチケットを取るのも一苦労なほど、有名で人気なピアニストだ。
小春ちゃんは、そんなすごい人の娘なのだ。
ピアノが上手いのも、それなら辻褄が合う。
ピアノが上手いのは本人の努力もあるだろう。
だけど、お母さんの才能を受け継いでいるのは間違いないかもしれない。
「あっ、佐奈ちゃん。 あたしの演奏どうだった?」
「えっ?」
小春ちゃんからの突然の質問。
ぼーっとしていたあたしは、内心ぎくっとした。
そんなこと関係なしに小春ちゃんは椅子から立ち上がると、あたしの目の前までやってきて足を止めた。
身長があたしより少し高い小春ちゃんを見るには、少し見上げなければならない。
小春ちゃんを見ると、小春ちゃんはあたしを見下ろす感じで微笑む。
「佐奈ちゃん。 あたしの演奏の感想教えてくれないかな? あたし、同じピアノを弾く人の感想が聞きたいの」
小春ちゃんの表情は、少し真剣だった。