光を背負う、僕ら。―第1楽章―
…どうして、あたしに聞くのかな?
小春ちゃんのお母さんはピアニストだし、ピアノ教室にも通っているはず。
どうせ感想を聞くのなら、自分のお母さんやピアノ教室の先生に聞くのが尤もなのでは……?
だけど、なんだかそれは聞いてはいけないような気がした。
そう思ったあたしは、言われた通りに感想を言おうと口を開く。
「すごく良かったよ。 華やかで、流れるようなハーモニーがすごく良かった。 あたしなんか、やっぱり全然駄目だなって思っちゃった」
小春ちゃんは安堵のような表情を一瞬見せた後、嬉しそうに微笑んだ。
「…そっか。 ありがとう! 佐奈ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいよ」
小春ちゃんは、本当に嬉しそうに笑っていた。
あたしみたいな、素人の言葉で。
すると突然、小春ちゃんの表情が険しくなった。
そして、そんな小春ちゃんが真剣な瞳で言う。
「……だけど。 あたしだってまだまだだよ。 今の演奏には何かが足りない…」
小春ちゃんは顔をしかめて真剣に悩んでいた。
――きっと小春ちゃんは、まだまだ成長する。
体の奥深くに潜む本能的なもので、あたしはその時そう感じていた。