光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「それにしても二人とも、綺麗なピアノの演奏だったわね!」
鈴木先生が思い出したように、そしてなんだか嬉しそうに言った。
小春ちゃんとあたしの顔を、まじまじと見ながら。
…やっぱり。
あたしの演奏も聞かれてたんだ…。
そうだよね。
音楽室の隣りの準備室にいたんだもん。
聞こえるのは、当たり前か…。
でもまさか、鈴木先生に聞かれるとは思っていなかった。
そもそもあたし、演奏を誰にも聞かれるつもりはなかった。
なのに、おとといは明日美や流歌に聞かれて、おまけに彩愛ちゃん達にも聞かれる。
そして今日は、小春ちゃん達や鈴木先生にまで……。
あたしは一体、何をやっているんだろう…。
お母さんとの約束を、破ってばかりだ…。
「小春ちゃん。 やっぱりピアニストの娘さんなだけあるわね。 魅力を感じる演奏だったわよ」
「ありがとうございます」
誰にも演奏を聞かせるはずではなかったのに、予定外の人達に聞かれてしまったあたしは軽くショック状態だった。
だけど鈴木先生と小春ちゃんは、とても楽しそうに会話をしている。
特に楽しそうに喋っているのは鈴木先生の方で、そんなオーラが溢れていた。