光を背負う、僕ら。―第1楽章―
鈴木先生はそんなオーラを溢れさせたまま、視線を小春ちゃんからあたしへと移した。
なんだろうと思う暇もなく、鈴木先生は唐突に口を開く。
「佐奈ちゃんの演奏も、すごく良かったわよ」
「そう…ですか? …ありがとうございます」
「佐奈ちゃんって、どこかのピアノ教室に通ってたりする?」
「いえ…通っていません」
「えっ? じゃあ、さっきの演奏は自己流?」
「自己流というか…まぁ、そんな感じです」
「へぇー…」
鈴木先生はあたしの返事に興味深そうに頷いていた。
周りで会話を聞くみんなも、あたしの答えに驚きを隠せないみたいだ。
「…私ね、佐奈ちゃんの演奏聞いてたらあるピアニストのことを思い出したわ。 先生が幼い頃有名だったのよ。 今は引退してるけど、結構有名だったからあなた達の年代でも知ってるかもしれないわね」
鈴木先生はここで一呼吸置いた。
「――笹川詩織さんって人なんだけど。 ……佐奈ちゃん知ってるかしら?」
…ドクン……
心のどこかで、何かが反応した。
「笹川詩織さんって…。 お母さんと無二のライバルって言われていた、あの笹川詩織さんですか?」
「小春ちゃん、知ってるの?」