光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ドクン…ドクン……
胸騒ぎのように、心臓がバクバクと鳴り続ける。
必死に落ち着かせようとしても、なかなか治まらない。
気がつくとあたしは、制服のスカートをぎゅっと握っていた。
しかも皺が出来てしまいそうなほど、強い力で。
「みんなが知らないのも無理ないわ。 笹川さんが引退したのは、みんなが小学生になったばかりの頃だもの」
鈴木先生は、ざわざわと呟くみんなの疑問に答えるようにそう言った。
「あっ、佐奈ちゃんは知ってるかしら? 笹川さんのこと」
鈴木先生はふとあたしを見たかと思うと、みんなのように騒いでいないあたしに声をかけてきた。
鈴木先生がこっちを見た時、咄嗟にスカートを握っていた手を離す。
幸い、人にバレるような目立つ皺は付いていなかった。
「…知ら…ないです」
「…そう…」
震えそうになる声で、必死にそう答えた。
できるだけ、平常心を保って。
それに比べて鈴木先生は、何かにがっかりするような声だった。