光を背負う、僕ら。―第1楽章―



先生が時計を見て騒がしく捲し立てる中。



あたしは音楽室のドアの取っ手に手をかけた。




キィー…




ドアを開けた時の独特の金属音を耳障りに感じたとしても、それは嫌でも耳に入ってくる。



そしてその嫌な音は、明日美と流歌の耳にも入ったらしい。



「…佐奈、どうしたの?」



二人はただ、不思議そうあたしの姿を見て言った。



あたしはいつも、明日美と流歌と一緒に下校している。



音楽室を出るタイミングも、いつも一緒だ。



なのにあたしは今、一人で音楽室を出ようとしている。



そんなあたしを見た二人は、当然不思議に思っただろう。



「…ちょっと、トイレに行ってくる。 だから二人とも、昇降口で待っててくれる?」



半分心配そうな顔をする二人に、にこっと小さく微笑んだ。



「…そう。 じゃあ、先に下に行って待ってるね」


「うん、そうして」



返事をした後、中途半端に開けていたドアを全開にして音楽室を後にした。




――――……



音楽室を後にしたあたしは、すぐさま音楽室の近くのトイレに向かった。



そしてトイレに着くなり個室に入り、ドアを勢いよく音を立てて閉めた。



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