光を背負う、僕ら。―第1楽章―
だけど今の心情のせいかして、なかなかスニーカーを履くことが出来ない。
スニーカーの踵(かかと)の部分を踏んでいるから履けないのだけど、無精して手で直そうとはしない。
それぐらい、気持ちが混乱していたんだ。
目が合った時、伸一君の反応は予想出来ていた。
出来ていた……はずなのに。
どうしてあたし、こんなにも気持ちがもやもやしているんだろう。
さっきとは違って、すぐ近くで同じ反応をされたから?
…分からない。
だけど気持ちがもやもやして、なんだか辛くて仕方ないよ…。
混乱していた気持ちも徐々に落ち着き、気が付くとスニーカーも履けていた。
…早く帰ろう。
そう思って一歩踏み出した時、何かを踏んだ。
そしてその何かを踏んだことにより、つんのめてこけそうになった。
「だっ、大丈夫?」
あたしのそんな姿を見た二人が驚きながら言った。
「あはは…大丈夫だよ。 こけてはないし」
こけそうになる瞬間はヒヤッとしたけど、今は伸一君にもあの姿を見られたという羞恥心でいっぱいだった。
「佐奈、何につまずいたの?」
「分からない。 つまずいたというか踏んだみたいで……あっ」