光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ただ誰かを恨みたいとか、そんな気持ちはない。



伸一君の反応がないことは、少なからずわかっていたこと。



鈴木先生や小春ちゃん達にピアノを聞かれたことも、特に気にすることじゃない。



お母さんを知っている人が現われたっていい、バレないようにしたらいいだけ。



この二人があんなに微笑みながら話すのも当たり前。



だって二人は付き合っているんだもん。



だけど二人が一緒にいる所を見るはめになったのは、本当についてないんだ。



以前から、二人が一緒に帰ることは知っていた。



一度、自分の目で見たことがあるから。



それからはいつの間にか避けていた、二人が一緒に帰る姿を見ることを。



明日美や流歌もあたしに気配りしてくれて、いつもあの二人の姿がない時に「帰ろう」って言ってくれる。



そこまでした。



そこまでしたのに、どうしてついてない今日に限って見てしまうんだろう。



ついてない悔しさ、辛さ、悲しさをどうすることも出来ずに、ただ自分の心の中で消え去ることを祈った。




「じゃあ小春、あたし達帰るね。」



「うん、バイバイ。」




小春ちゃんの友達はみんな、小春ちゃんに挨拶をして帰っていった。




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