光を背負う、僕ら。―第1楽章―
小春ちゃんと伸一君が一緒に帰ることは恒例。



きっとこの光景も恒例なのだろう。




「佐奈、結べた?」




明日美が手を止めているあたしに問い掛ける。




「あっ、えっと…まだ。」




と慌てながら靴紐を結び始めた。



明日美の問い掛けは、あまりにも不自然に感じた。



靴紐が結べているかどうかは、見ればわかるはず。



なのにあえて聞く所に、なぜか引っ掛かった。




もしかして、あたしのことを気にかけてくれたの…?




チラッと上目で明日美を見る。



明日美は見られていることに気付いていないみたいだけど、やけにそわそわしているように見えた。




『早くこの場から去ろう』




そんな明日美の心の声が聞こえてきたような感じがした。



試しに流歌を見てみる。



自分の鞄とあたしの鞄をギュッと持ち、そわそわしている。




『早く小春ちゃん達、帰ってくれないかなぁ…』





また声が聞こえてきたように感じる。



二人があたしを心配する気持ちが伝わったてきたんだ。



だけどあたしはただうつむいたまま、靴紐を結んだんだ。



けどどうしてか、なかなか靴紐が結べない。



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