光を背負う、僕ら。―第1楽章―
そう答えると、小春ちゃんはいっそう微笑んだように見えた。



あたしの複雑な気持ちを知るはずもない、屈託のない笑顔だ。




「麻木、ピアノ弾けるんだ?」




小春ちゃんの次は、伸一君に話しかけられた。



なんとなく聞かれることは、予想していた。



そしてその予想は的中。



『弾けるんだ』という言葉から、意外だというような思いが伝わってくる。




「…うん、一応ね。」


「ふーん。」





なんという無反応だろう。



聞いてきた本人とは思えない反応だ。




せめてもう少し、驚いてくれてもいいのにな。




そう思う間に、さっきまであたしを見ていた伸一君はもう小春ちゃんを見ていた。



まるであたしとは、ほんの一瞬も会話をしていなかったみたいだ。



教室での会話とは、明らかに違う。



違いがありすぎて、あたしのほうが戸惑ってしまった。




「さーて、帰るとするか。」




ユニホームのハーフパンツのポケットに手を突っ込みながら、伸一君が言う。




「そうだね。」




と小春ちゃんが答える。



それと同時に、伸一君が歩き出した。




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