光を背負う、僕ら。―第1楽章―
伸一君のあとについて、小春ちゃんも足を踏み出す。



だけど、すぐに止まって振り向いた。




「佐奈ちゃん、またピアノ聞かせてね。」




まるで無邪気な少女のようだった。




「うん。」




あまり乗り気ではなかったのに、口は勝手にそう動いていた。




「みんな、バイバイ。」




小春ちゃんはあたし達に手を振る。




「バイバイ。」



と明日美と流歌が手を振る。



あたしも



「…バイバイ。」



と言って手を振ると、小春ちゃんは少し先に行ってしまった伸一君を追い、小春ちゃんが追いつく頃には下駄箱の影へと二人の姿が消えた。




「「「…はぁー。」」」




二人の姿が見えなくなった途端、見事に三人のため息が重なった。



どのため息も、かなり深い。




「佐奈、何そのため息。暗いよー。」



とすかさず言うのは明日美。



あたしはしどろもどろしながら、



「えっ、暗いため息は流歌でしょ?」



と明日美に言われたことを伝言するように流歌に言う。




「違うよ。今のは明日美だよ。」



と流歌が言ったので、見事に伝言は最初に言った明日美にと伝えられた。




< 94 / 546 >

この作品をシェア

pagetop