追っかけバンドマン
よし、決めた明日言おう。
ちゃんとNoって言わなくちゃ…、いつまでも悩みっぱなしじゃ、何も手につかない。いつまでもここで立ち止まれない。
ちゃんと、みさきみたいに笑いたい…。
「ねぇ、美香ぁ~」
久々にみさきと帰っていたら、急に袖を引っ張られた。
「ん、何?」
「あのさ…、聞いたよ。全部。健人から。沢北さんわ本気だと思う、って言ってた。返事がこないのも、すっごく心配してたし、『俺わ美香ちゃんと、一緒に歌いたい!!』って毎日言ってるんだって。」
「そう…」
分かってる、沢北さんが本気だってこと。そんなの分かってる。
だけど、だけどあたしわ――……
「美香?歌うの好きでしょ?いっつも歌聴いて鼻歌歌ってる美香、すっごく楽しそうだったし、それにっ!!沢北さんと一緒に歌った時わ、もっと楽しそうだった。
まだ、高校生なんだよ……?結果がどうなったとしても、今を楽しまなくっちゃ!!ね、美香?」
今を……楽しむ?
後先考えず、今を楽しむだけに、Yesって言っていいの?
やりたいことだけやって、後悔するんじゃないの?
「美~香!!!返事、今しなくっちゃ!!!」
ポンッ
軽く背中を押された。
「実わ、今日わデートなんだぁ♪」