追っかけバンドマン


「遅かったな。」

「あっ、すいません。遅くなって…」


早く行きたかったけど、反省文を出しに行ったら、サトヤンに職員室で長々と説教されてしまった。


「ん、全然いいよ。てか、なんで遅れたの?」


「えーっと…」

本当のことを言ったら、きっとあたしに遠慮して、ライブの回数を減らしちゃうと思う。

「あの、なんかHRが長引いちゃって。」


「そう。んじゃ、やろっか。」


「はい。」

そう言うと、ギターをケースから出して、ササッとチューニングを始めた。

そんな沢北さんの横顔わ、楽しそうで、ウキウキしてて、今から歌うのが嬉しくて仕方ないって顔をしている。



「沢北さん…。」


あたしわ?
あたしわ沢北と歌うのが今楽しい?

歌っていくにつれ、自分の価値がどんどん低くなっていくようで--

正直辛い。

どれだけみさきに励まされても、お世辞にしか聞こえない。
だから余計辛い。



「あの…、あたし今日歌えません。」



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