追っかけバンドマン
「まだ来てないね、何か頼もっか。」
「そうですね。」
カランコロン
あたしが言葉を発したその瞬間に、入り口が開いた音がした。
入ってきたのわ、何年か前に消えたはずの……やまんば。
唇わ白く塗られていて、髪わ男のくせにあたしより長いロング。しかも、それを盛っている。
服装わ目が痛くなるような、真っ黄色のパーカーに、ズボンを膝丈までまくっている。
久々にそんなやまんばを見て、沢北さんとあたしわ言葉がしばらくでなかった。
だって―…ひどすぎる……
やっと喋った言葉が、『あの人、橘さんじゃないといいですね。』そんな心配するまでも無い、当たり前のこと。
だって、昨日電話した時わ、優しそうな気さくな感じだったから。
そして、そのやまんばわあたしたちの視線に気づいてしまった。
やばっ!!見すぎたかも!!!
パッと視線を反対に向けてみても、それわ無意味だった。
少し鋭い目つきでどんどんあたしたちのテーブルへ近づいてくる。