あなたのペット的生活
俯いた顔を覗き込もうとしたとき、思いっきり走って逃げられた。
制服のスカートがひらひらと揺れている。
「おい!!」
走り去る乃亜の背中に声をかけるけど立ち止まることなく、乃亜は自分の家に入っていった。
なんなんだよ。
ったく。
何で泣いたのか全然わかんねぇ。
「あの……さ、岩熊君」
「何?」
「こんな時に言うのもおかしいけどさ。
私、岩熊くんのこと好きなんだけど」
「だから?」
「付き合ってほしい」
「いやだ」
「なんで?」
「俺は好きじゃないから」
普通に考えて無理でしょ。
サークルの飲み会でちょっと話しただけの奴と付き合うなんて。
この女がどんな奴で、何型で、どんな暮らししてるのかも全く知らないのに、じゃあ付き合いましょうってのは無理だし。
性格が分かった上で、いい奴なら付き合うか悩みもするけど、そんな段階でもないこの女と付き合うなんて時間の無駄。
ついでに言えば、この女と歩いてる今の状況も無駄。