執事とお嬢様、それから私
『わかりました。うんん、無理はしないで…うん?じゃぁ、はい。また…おやすみなさい』
プッ プープープー
「はぁ…」
無機質な音がやけに耳について、わずかな苛立ちとため息と共に携帯を閉じた。
自然とうつむく視線を少しあげれば、小さな1人暮らし用のテーブルにところせましとならんだ料理が映り、もう一つ大きなため息をついた。
彼と1ヶ月ぶりに会えると聞いて、講義が終わったら真っ先にスーパーにより、大量の買い物をして料理をし、今か今かと待っていた。
そんな時震えた電話に嫌な予感がしつつ、それを耳にあてた。
『すまない…お嬢様が熱を出されたんだ。今日は行けない。』
あぁ神様はなんて意地悪なんだろう。
「…ほんと、さいてー。作る前に連絡してよね…」
でてきた自分の声があまりに力がないことに苦笑しつつ、ワーカーホリックな彼と神様を恨みながら料理にラップをかけた。