執事とお嬢様、それから私
「俺にとってお嬢様は大切なお方だ。でもかのこ…家族愛と恋愛とを天秤にかけるのはとても難しい。」
語られた事にはっとした。
例えて言うならお母さんとか妹と私どっちが大事なのよ!!っていう最低な事を言っていたも同然…
「ごめんなさい…」
私はなんて事を言ってしまったんだろう。
「かのこが謝ることなんか何もないよ。いつも、いつも許してくれるかのこに甘えすぎていた…すまない。かのこ…」
掠れる弱気な声に私はそろりと自分の腕を東條さんの背中に回した。
「触れて、ドキドキするのはかのこにだけだ…」
言われてそっと耳を押し当てればドクドクと、早鐘をうつ心臓の音が聞こえて私はそれに驚き顔を上げた。
「逢いたいと思うのも、キスしたいと思うのも、全部かのこだけだ…」
そっと東條さんの顔が降りてくる。
「かのこ、愛してる」
不安はもう、なかった。