執事とお嬢様、それから私
こんなことは日常茶飯事だ。
たまのデートもここぞってとこで『お嬢様』から電話がかかってくる。
わかってた…わかってて、好きになった。
でも、やっぱりツラい。
日本随一の大富豪である西園寺家の一人娘の執事。
その仕事をわかってあげたフリがしたくて、なきながら笑顔で電話にでる私。
今、彼が私でない女と一緒にいる事実。
私よりずっとずっと彼に近い『お嬢様』。
でも
16歳の『お嬢様』に負けたくないだけだって、わかってる。
醜い嫉妬に見て見ない振りをしてるだけ…
そんな事を考えながらシャワーを浴びていたら鼻の奥がツンとしたのを感じて私はシャワーの水流を強くした。
泣きたくない。
「意地っ張りね…」
呟いた声は水と一緒に排水溝に吸い込まれていった。