執事とお嬢様、それから私


「おはよう、かのこ」

「おはようございます、東條さん」

照れたように笑って車に乗り込むかのこ。

今日はお嬢様からいただいた連休を使って、前にかのこが行きたがっていた旅館に行くことになった。

かのこと付き合ってからどこかに泊まりに行くことはおろか、連休をいただいたのも初めてで、柄になく浮かれている自分がいる。

「シートベルトは?」

「しましたっ」

「よし、いくか」

土曜の朝7時。車はまだ空いていてラクに進んでいく。

窓を開ければ心地よい朝の風が気持ちいい。

となりにはまだ眠たげなかのこ。

うん。幸せだ。

「かのこ?寝てて構わないよ。後ろにブランケットあるから。」

「でも…」

「昨日無理やりレポート終わらせたんだろ?着いたら起こすから、寝てなさい」

「うん、ありがと…」


本気で眠かったらしい。

数分たったらクゥクゥ聞こえてきた可愛らしい寝息。

赤信号で思わずキスしたのは、内緒である。
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