執事とお嬢様、それから私
「そちらの女性は嫌がっているようですが、同意の上ですか?」
けして大きくはないその冷静な声はなぜかその場にいた全員の耳に届いた。
あぁんと唸りながらやっすいチンピラのように男たちががんたれる。
私もその声の主を藁にもすがる思い出見上げた。
「え!?」
思わずそう言ってしまうほど‘その人’はこの場にあっていなかった。
しわ一つないピシッとした黒のスーツを着こなし、神々しいまでに整った顔をした背の高い男性。
酒による都合のいい錯覚かと思い目をこすってから再びみてもその人はなにも変わらず美しかった。