執事とお嬢様、それから私
「……」
歩き初めて15分。登りが続く。気をつけてゆっくり歩いてるが、よく考えればコイツはさっき、俺のあとを走り回ってついてきた。
夏だし。暑いし。
疲れてねーわけがない。お嬢様、らしいし。
文句の一つでも言うのかとおもったがこいつは黙って歩いてる。
…ふーん。
「…疲れてねぇ?」
「…つ、つかれてなんかありませんわ」
玉のような汗をかいて、ピンクのリボンで縛られている髪は乱れている。
まったく、とんだお嬢様だ。
「お嬢様、わたくしめがお飲み物を用意させていただきたいのですが、お許しねがえますか?」
わざとらしく腰を折って小さなお嬢様に笑みを向ける。
「と、特別に、きょかしてあげますわ」
本当に、可愛くない。