執事とお嬢様、それから私
自動販売機でミルクティーを買ってやると紅茶の味がしないだのこんなのミルクティーじゃないだの言いたい放題言いながらもコクコクとミルクティーをのみ終えたあやな。
その隣でミネラルウォーターをのみながら無意識にタバコの箱に手を伸ばし、はたと気づいて、そっと手を引いた。
なんだか、あやなの前では吸えなかった。
悪ぶってるみたいな自分が、ひどくカッコ悪いように思えたから。
「さぁ、行きましょう。和之」
「はいはい」
「ねぇ和之。お話してよ」
「はぁ?」
「暇ですの、お話、してよ。そうね、学校とかお家の事とか!!」
「…話す事なんかなんもねぇよ。俺、そうゆう意味では真っ白だから」
「あら、何もないにんげんなどこの世にいなくってよ?和之はねぇ、見た目は良いわね!!まさとには劣るけど、あと、優しいわ!!意地悪だけど。あとは…」
楽しそうに出会ったばかりの俺について話すあやな。
他人に自分の色を決められるのなんか不快なはずなのに、小さな口から紡がれるその色は心地よい。
なぜ?その答えはわからない。