執事とお嬢様、それから私
「承知いたしました」
そう言ったような気がする。
その人が長い足が一歩を踏み出し、男達が拳を振り上げたまではみた。
一瞬だった。
視界に映るのは音もなく崩れ落ちた男達、そこに佇むその人…。
腰なんてとっくの昔に抜けていた私は地面にペタンと座ったまま現実離れした現実を呆然と見ていた。
「お怪我は?」
冷静というかなんの感情もないような声にせめられている気がして私は体を小さくした。
「だ…大丈夫です…」
なんとか絞り出した声は震えていた。
俯く視界に綺麗に磨かれた上品な革靴が映った。
「立てますか?」
差し出された手はは白い手袋に覆われていた。長い指をたどって顔を上げれば思ったよりずっと近い場所に整った顔。
「あ、の、」
「はい」
「こ、腰が抜けて立てません…」
「…………」