倒錯夜話(センチメンタルナイトホラー)
一ヶ月後、チロを見かけた。

前と違い、眉間に縦ジワを作り、お供の犬を二匹連れていた。

「チロ……!」

真昼は懸命に後を追った。

チロは山に上がって行った。

獣道もいつしか消え、真昼が気づいた時はもうあたりは夕闇だった。

真昼は必死で山の斜面の木につかまりながら、下まで降りた。

そこは池になっていて、池のほとりに屋根つきの地蔵があり、倒れていた。

「お気の毒に……。」

真昼は地蔵を起こすと、そばにあった彼岸花を手折って供えて帰った。
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