空になりたかった海
父に会いに来た、と告げて名前を名乗ると、早速部屋に電話をしてくれた。


部屋番号を聞いてからエレベーターで上にあがる。
かなり古いホテルらしく、エレベーターもゆっくりしたスピードだった。


「よっ」

エレベーターが開くと、目の前に父が立っていた。


「どうも」

思わずそう言うと、父はうれしそうに

「よく来てくれたな」

と私の肩に手を回し、部屋へ案内してくれた。


部屋の前まで来たときに
「今、1人なの?」

と聞くと、一瞬考えるように眉をひそめて

「あぁ、そっか。母さんから聞いたのか」

と、うなずく父。
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