空になりたかった海
ホテルは、海からすぐそばにある坂道の途中にあった。


ちょっとしたビルくらいの規模だったが、いかにも高そうなホテルだった。


「ここが一泊一万なの??」

入り口近くで尋ねた。

外装や玄関の雰囲気は、知る人ぞ知る高級旅館みたいだ。



「大丈夫、今回の旅行は私が誘ったんだから、まかせといて」


「一万の約束じゃん。対等な友達でいたいの」


私が不平を言うと、ナツはにっこり笑って

「だから、今回の旅費全部で一万なの。さ、行こう」

と、フロントへ歩いていってしまった。


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