空になりたかった海
猿沢がいつのまにか保健室に帰ってきていた。


「山本さん、お昼食べた?」


と聞かれて、山本が自分の名字だと思い出す。


私のことを性で呼ぶ人もあんまりいないから。



「まだでーす。なんだかぼんやりしちゃってた」

お弁当を鞄から取り出す。


「曇り空ね。梅雨入りしたらしいし」

猿沢が空を見上げてつぶやく。


もそもそとお弁当を食べながら、私はあることを猿沢に聞いてみようと思いついた。


「先生、あのね、スナック夏風ってどこにあるか知ってる?」
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