空になりたかった海
「これからは違うよ」

私はちゃんとナツの方を見て言った。
ナツがこちらを見る。


スゥっと息を吸い込んで、私は続ける。


「ナツさんが、これから旅行に行っても、そして旅行なんかに行かずに毎日を過ごしていても、ウチがいつも気にかけているからね」


とたんにナツは泣き顔に変わる。

「はい、泣かないの」


「だってぇ~」



全くほんとによく泣く人だ。



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