空になりたかった海
夕暮れになり、リビングに顔を出すと、父の姿はなかった。


台所では母がいつもと変わらず、夕飯を作っていた。


「旅行、たのしかったんだってねぇ」

私に気づいた母が言った。
私は、ソファに座ると

「うん、まあまあかな」
と、あいまいに言っておく。


父とちゃんと打ち合わせしとけばよかった、と思うがもう遅い。



私はテレビをつけると、特に興味もないニュースを見ているふりをした。
< 203 / 282 >

この作品をシェア

pagetop