空になりたかった海
あわてて、着替えて外に飛び出す。


「なんでーなんでー」

つぶやきながら走り出した。


バス停にむかっていると、正彦が前を歩いていた。


前はドキドキして声もかけられなかったのに、今は緊急事態だ。


「まさくん!」


「おー、光、早くプール行こうぜ。夏終わっちゃうよ」


私は、はぁはぁと息をついで、正彦に言う。

「いや、ごめんね連絡できなくって。旅行の後、風邪ひいて寝込んでしまってたんだよ」


正彦は、私の焦りなど知らないで

「へぇー。お前が風邪ひくなんてな。珍しい」

などと憎まれ口をたたいている。

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