空になりたかった海
正彦から電話があったのは、夕方すぎだった。


「なぁ、もう何日も家にいるんだろ。そろそろ外に出てこいよ。ヒマで死にそう」


いつもと変わらない声に、安堵する自分がいる。

「でも、そんな気分になれないんだよね」


私は言った。



「そっかぁ。せっかくナツさんの事調べたのになぁ」


「なに、それ」


興味をしめした私に、


「じゃ、明日朝からプール行こうぜ。迎えにいくから。そんとき教えてやるよ」


と、正彦は言う。
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