空になりたかった海
母の注文どおりに、カゴに牛乳と白菜を入れ、レジに向かおうとしたその時、見覚えのある後ろ姿が前を行くのに気づいた。


「猿沢センセ」


声に振り返った猿沢が、「まぁ~山本さん」
と近づいてきた。


猿沢は、ニコニコして


「すごい偶然ねぇ~、こんな所で会うなんて」


とうれしそうだ。



「でも、この街のスーパーってあんまりないから、誰かには出会いますよ」


私が笑って言うと、


「相変わらずクールね」

と、あきれた顔をしていた。

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