空になりたかった海
猿沢は、思い出したかのように

「最近どう?ほら、ご家族でいろいろあった、って言ってたから気になっていたのよ」

と尋ねた。



「あぁー、それならもう解決しましたよ。以前より仲が良くなったみたく見えます」


「そう、良かったわね。その…、お父様の好きな女性って、まだ山本さんと仲がいいの?」


猿沢は、ためらいがちに聞いた。


「その人なら、つい先日ね…」

そう私が言いかけた時だった。


私は、自分の鼻が急にツーンと痛くなるのを感じた。

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