空になりたかった海
正彦のもとへ戻ると、ようやく宿題を写し終わったらしく、

「サンキュー」

と、伸びをしていた。


「こっちこそ、ごちそうさん」

たこ焼きを見せると喜んで食べだしている。


その姿を見て、このまま時間が止まればいいと願う。


「あ、今さ、紗耶香見たぞ」

正彦が口をモゴモゴさせながら言った。


「うん、今会ったよ。高校生の彼氏と来てるんだってさ」


「あいつらしいや」


笑う正彦を見て、私は心で謝る。


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