空になりたかった海
土手の部分に正彦が座ったので、私もそれにならう。


はるか向こうからやってくる夕焼けが、街をオレンジに染めてゆく。


「たまにはプールもいいよな。めちゃ混みだけどさ」


「うん」


「…気分転換になったか?」


正彦を見ると、彼はオレンジを見つめていた。


「ありがと。楽しかったよ」


心からの言葉だった。


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