空になりたかった海
「んー」


否定にも肯定にも聞こえる返事をしながらも、目はテレビから離さない。


「今、ちょっと話してもいい?」


「もう、ソファに座ってんじゃん」


「あのね、実はね」


こちらの話など聞くつもりもなく、母親はテレビのスイッチを勝手に切った。



沈黙



わざとらしく間を置くのも、いつものこと。


ため息をつきつつ


「なに?」


と顔を見る。
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