空になりたかった海
母は、ソファに座り直すと話を続けた。


「分かってると思うけど、お父さん、好きな人ができたらしいの」


「やるじゃん」


冗談めかして言ってみる。実際、ショックというほどでもないし、そういうこともあるだろうなーと感じる。


「離婚すんの?」

肩まで伸びた髪を、指先でいじくりながら尋ねた。


「そのつもりはないらしいわ。ただ少しだけ、1人でいたいんだって。今は駅前のホテルに泊まってるのよ」
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