空になりたかった海
「いつも同じ服ばっかりじゃ、恥ずかしいでしょ」


私は母の顔をしばらく見つめて納得した。


そうか、どんな様子か私に偵察に行ってほしいんだ。

素直に言えばいいのに。



「わかった。じゃ、明日行くよ」

私はテレビのスイッチを入れた。


すぐにリモコンが取り上げられ、無情にも映し出された画面はアッサリと消えた。

母はニッコリ笑って宣言した。


「だめ、今から行ってちょうだい」




やっぱり、名前で呼ばれるとロクなことがない…。
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