空になりたかった海



そのホテルは、いわゆるビジネスホテルというやつで、外観からいってもあまり立派とは言い難い建物だった。


母のあぶなっかしい運転で車が駐車場にとまる。

「ほんとに私1人で行かせる気?」


恨めしそうに運転席の母を見るが、黙って微笑むだけだ。


車から降りて、トランクを引きずりながら入り口を入る。


フロントの男性スタッフが、ビックリした顔で私を見ている。

まぁ、中学生が1人でビジネスホテルにトランクを引きずって来たのだからムリもない。
< 9 / 282 >

この作品をシェア

pagetop