不良の法律~Judge Town~
薄々いやな予感はしていた…。

院長先生にサヨの事を聞いても何も教えてくれなかったし、俺の担当医も俺の体調が良くなってから話すとしか言ってくれなかった…。

十中八九、サヨの身に何かあったのは火を見るよりあきらかだ…。

でも、実際にサヨに会うと、俺の小さな覚悟はもろくも崩れてしまった…。

目の前の現実を脳が受け付けてくれない。

体は自然と震えだし、自分を厳しく律しようとしても、体は言う事を聞いてくれなかった…。

「カズヤ君。よく聞いて…」

そんな無様な俺を柏木先生が、背中を優しくさすりながら、話を聞かせてくれた…。

「確かにサヨちゃんの心は壊れてしまった『可能性』があるわ。でも、心はパズルみたいなもので、バラバラになっても必ず復元出来るの。…私はそう信じている。だから、カズヤ君にもサヨちゃんの治療を手伝ってほしいの」

柏木先生はそう言うと、俺の眼を慈愛を秘めた目つきで見つめ、優しく俺の手を握った。

「その為にも、カズヤ君にはこの現実を受け入れてもらいたいの…一人ぼっちになったと勘違いしているサヨちゃんに必要なのは、心の休息と家族という名の希望。サヨちゃんの兄であるカズヤ君がサヨちゃんの希望なの…どんな闇の中に居ても、希望さえ残れば必ずサヨちゃんは帰ってくる。だから、カズヤ君はサヨちゃんの為に『強く』なって。」

体の震えはいつの間にか消えていた…。

代わりに湧き上がってきたのは、サヨを絶対に治してやろうと言う希望だった…。

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