不良の法律~Judge Town~
「俺に出来る事なら何でもします。俺は具体的に何をすればいいんですか?」

俺は単純な男だな…。

あれだけ目の前の現実に絶望していたのに、もう立ち直っている…。

いや、違うか…柏木先生だからか。

この先生だから、俺は希望を持てたのかもしれない。

人間性がよく出た柔らかい笑顔や、優しい口調が、俺に希望を持たしてくれたのだ…。

柏木先生は俺の言葉を聞き、柔らかい笑顔を浮かべると、人差し指を立て、こう俺に話した…。

「簡単よ…ただ昔の思い出話を、サヨちゃんに話すだけでいいの。」

「思い出話…ですか?」

柏木先生は、うんと前置きを置いて理由を話してくれた…。

「楽しかった思い出や、嬉しかった思い出…サヨちゃんが聞いてなくてもいいの、ただサヨちゃんの耳に届く位置で話を聞かせてあげるの。そうすればきっと、サヨちゃんの意識は戻ってくる。記憶を取り戻すのに大切なのは、サヨちゃんが現実に帰ってきたいというきっかけなの…カズヤ君が居て、ヒサジ君が居るこの世界に帰ってきたいというね」

サヨが、帰ってきたい世界…か。

なんとなく先生の言っている事が解る気がする…。

俺にとってサヨが大切なのと同じぐらい、サヨも俺の事やヒサジの事を大切に思っている筈なんだ。

だから、俺の声でサヨに呼びかけるんだ…。

俺はここに居るぞってな…。

「解りました。やってみます」

「ふふっ…じゃあさっそくやってもらおうかな」

柏木先生はそう言うと、病室のドアに向かって歩きだした。

「私が居たんじゃ話ずらいと思うから、出てるわね。一時間したらまた来るから、それまでサヨちゃんを頼むわね」
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