不良の法律~Judge Town~
俺は話した…。

何回目になるか忘れたが、話した…。

サヨの身を常に案じ、サヨを守ってきた王子様の話を。

理解できてるか分からないが、サヨはヒサジの話が好きだった。

黙って俺の話に耳を傾け、ただじっと俺の話に耳を傾ける。

そして最後まで俺の話を聞くと、サヨは…かならず発作を起こすんだ。

体を小刻みに震わせ、俺の服を強く掴む…。

そんなサヨの背中をゆっくりさすりながら落ちつかせ、サヨが眠りにつくまで一緒に居てやるんだ…。

それが俺の日課だ…。

今日も、サヨが眠りにつくまで一緒に居たら病室のドアが開く音が聞こえた…。

病室に入ってきたのは、サヨの担当医である柏木先生だ。

「…眠りについたのね。どう?サヨちゃんに変化はある?」

「いえ…いつも通り発作を起こして、眠りにつきました」

柏木先生は解ってはいたんだろうが、残念そうな表情を浮かべる…。

「そう…症状を見る限りはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発作だと思うんだけど、サヨちゃんの記憶を取り戻す鍵は、ここにあると思うのに…そう簡単にはいかないか」

サヨの記憶を取り戻すカギ…それがヒサジの話なのだと先生は言う。

PTSDは過去の辛い体験が引き起こすトラウマの症状の一つ。

当時の事件を思い出し、体が硬直したり、体が震えだしたりと様々な障害を引き起こす病気だ。
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