不良の法律~Judge Town~
だがミツハルは、俺の質問に答える事はなく、黙って車を走らせていた。

俺は、初めて見た複合地区の真実を自分の目で判断しようと思い、周りを注意深く観察するが、答えは変わらなかった。

俺の眼には至って普通の町にしか見えないのだ。

そうこうしているうちに、ミツハルの車は、とある場所にたどり着いた。目に見える範囲で一番大きな建物…どうやら此処は、複合地区の、中枢にあたる場所の様だ。

簡単に言えば大手の本社ビルの様な感じだ。500台ぐらい止められる駐車場が完備されてあり、建物自体は5階建ての横長で湾曲した作り…。

その駐車場に車を止めたミツハルはエンジンを切ると、俺にこう言ってきた。

「ここがマスターの大元の会社だよハヤト。マスターと呼ばれている人たちは皆、此処に勤めいる事になる。町で店を経営している人や、建設修理をしている人も含め、ここで働いている人は、この会社を経由して、仕事をしているのさ」

ここがマスターの勤め先って事か…。噂では、ジャッジタウンのバックには大手企業がついていると聞いていたが、あながちウソではないのかもな。

これだけの大きな建物を所有している会社なら、日本のトップクラスの会社の子会社でもおかしくはない。良くは解らないが、たぶんそうだろう。

俺とミツハルは車から降りると、入口の方向に歩き始めた。

「でもどうしてジャッジタウンの奥にここまでの大きな会社が存在しているんだ?今って不景気なんだろ?軽く社会に逆行しているような気がするんだが…」

「そうだな…不景気ってのは、昔の言い方で言えば、中流階級に居る人の収入が減る事で起きる現象なんだよ。普通に暮らしている人の生活水準が低くなるから、生活に困る人が多く感じるんだ。だから実際にはお金が無い訳ではないんだよ。ただ貧富の差が極端に開いているだけなんだ…」
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