fanatic fantasia〜冬と幻想夜の物語〜
酷く体がこわばっているのが分かる。
僕は此処で…――
悪い予感ばかりが脳内を駆け巡っていく。
それでも、もう後戻りなんて出来ないんだ。

分かってる。
分かってるけど…
自分もあの子達の様に、赤を巻き散らしながらこの銀色の剣を振るうのかと思うと――やはり怖かった。

何故神聖なる教会でこんな事をしているのか、とか…
どうして僕達がそんな怖い思いをしなければならないのかとか、考えても尽きない疑問は無意味なほど僕の中で反芻していた。

そんな風に脅えながら、教官に着いていく。
ただただこの人は怒らせたらいけないのだ、と漠然とした思いだけが僕の歩を進ませた。

この人が怖い。

   戦うのが怖い。

 傷付くのが――

     傷付けるのが…

大人が。

   子供が。

      教会が。

         世界が。

全てが怖くなってゆく。
あの赤い飛沫が瞼の裏に焼き付いて離れない。
皆笑顔の裏に痛みを隠していたの?
どうして優しくしてくれたの?
僕も何時かは傷つけられるの?

初めて出来た同い年の友達。
こんな酷い境遇のもとで…何故出会わなければならなかったのか。
普通に――平穏な日常の中で会いたかったよ。
そう思っても、この現実が変わるわけはなく…僕はずっと先にいる教官を見失わないよう、必死で着いていく。

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