fanatic fantasia〜冬と幻想夜の物語〜
まだ目的地につかないのか…
もう随分と教会内を歩いている気がした。
それは単に僕が小さいからなのか、本当にずっと歩きっぱなしなのか。
判断さえも難しいほど、僕は混乱している。

自分でも分かるほどの震えを必死に抑えて…この後にどんな事が待ち受けているのか。
出来る限り、これからの事を考えないように努る。
そうして歩いていると、教官が一つの扉の前で立ち止まっていた。

「着いたぞ、中には入れ」
それだけ言うと、重そうな白い大扉を開ける。
開け放たれた扉から中へ入ると、白くとても広い空間がそこにあった。

何処を見ても白、白、白。
単調なその大部屋には、他に置いて有るものは無く…ただ無駄に広い面積と天井の高さを誇っていた。

教官は僕が部屋に入るのを確認すると、大扉を閉めて此方に近付いてくる。
ある一定の距離を保ち、教官は立ち止まり僕を見下ろす。
そして腰に差してある剣を抜くと僕に言う。

「さっさと始めるぞ。剣を抜け」
教官は白銀に煌めく剣を構えた。
僕は教官の言っている意味を理解していたが、あまりの恐さに動けない。

抜く?
何を…
この剣を…?
無理だよ。
こうして抱えてるだけで精一杯なのに、どうやって戦うって言うんだ。

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