泣いたら、泣くから。


 奏斗は吐き捨てるように声を上げた。


「……姉貴は、姉貴は、本気で義兄さんが好きだった!」


 死ぬ間際まで義兄さんの子供を切望して、産めない自分を嘆いて憎んで、そして逝った。

 姉貴には義兄さんだけだったんだ。
 義兄さんのためなら命をかける覚悟だってあったくらいに、姉貴は義兄さんのことだけを思ってた。


「姉貴にとって、義兄さんはすべてだったんだよ!」


 顔を上げた奏斗の目は赤かった。あまりの威圧感に思わず息をのんだ。
 とっさに、見ちゃいけないと思い、私は顔を背けた。目を合わせていることが怖かったせいもある。

 

 奏斗の言葉ひとつひとつは、まるで鋭利な刃物のようだった。




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