泣いたら、泣くから。
彼は、最後に言った。
「姉貴が愛した男をやるわけにはいかねえんだよ!」
奏斗は知っていたのか。
私が叔父を愛していると。
だが、どこで知った?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
奏斗の言葉があまりに重く、苦しく、私にのしかかってそれどころではなかった。
いつかこんな日が来るとは思っていた。
隠し事は、いつかはばれるのだから。
そして、
そのことで傷つく人がいるということも、わかっていたのに――。
それでも私はやめなかった。
叔父への思いを止めなかった。
止めようとして抑えられるものではなかったけれど、彼に思いを告げなければ少なくともいまのこの最悪な事態は避けられたはず。
「好き」
その一言を伝えるたび頭をよぎった、自分は間違いを犯しているのではないかという後ろめたさ。
そんな暗い感情を、叔父への強い思いでなんとか覆い隠してここまできたけれど――それでも真実がばれて追い詰められたとき、隠しきれず、思いは津波となって溢れ出す。
打ちのめされた気分だった。
周りへの迷惑から目を背け、自らを省みようとしなかった――……違う。
そうじゃない。
私は、なんども振り返った。足元を見つめて、なんどだって立ち止まったのだ。
自分のしていることはけっして許されることじゃない。
私はこれでいいのかと繰り返し自分に問いかけた。
しかし、思うだけで、そこで己を制止しようとまではしなかった。
結果、目の前の彼に、私がもたらした悲劇をありありと見せつけられた。
奏斗からはなたれた一撃に、私は返す言葉が見つけられなかった。
ごめんだけですまないことは、あまりにわかりすぎたから。