泣いたら、泣くから。
三章-3
奏斗と「もう会わない」と約束を立ててから三日が経った日、姪がわたしのもとを訪れた。
制服姿が懐かく感じられた。
白地の学生服が眩しく、
夏が過ぎたばかりだというのに、同じくらい肌も雪のように白かった。
こんにちはと、いつもより落ち着いた声音で挨拶した姪は明らかに元気がなかった。
引きつった笑顔が、明るく振る舞おうと無理しているのをはっきりと伝えていた。
「一花ちゃん……」
「いきなり来てごめんね。でも、今日は家に上がったりしないから心配しないで」
姪は玄関から先へは進もうとせず、俯いたままぎゅっとスクールカバンの取っ手を握りしめていた。
やがて顔を上げ、なにか言い出そうとしたところをわたしは遮って、
「……もう来てはいけないよ」
単刀直入に告げると、姪は眼を見開き、かすかに体を震わせた。
「え」と短く、小さな音が途切れるのを聞いた。
姪は開いた口を何度か動かしたが結局、なにも言えず静かに閉じ、沈黙する。
「兄さんや春乃さんにも、言われてるだろ? 一人ではもうわたしのところへは来てはいけない」
わかるよね、一花ちゃん。
わたしの問いかけに姪は素直に頷いた。
そのまま俯き、黙り込む。
前髪の間からのぞく瞳がかすかに揺れているのがわかった。
涙をたたえている証拠だ。
それでも姪は涙を必死に我慢して、懸命に声を振り絞った。
「私のこと、嫌いになった?」
震える細い声が耳朶を打った。
直後、胸がけたたましい音を立て始め、顔を上げた姪の鼻が赤く染まっているのを見た瞬間、
わたしは息をのんだ。そして、
いますぐ姪を、この腕で包みこんであげたいという激しい衝動に駆られた。